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すてきなぼくの
すてきな家族
B5サイズ×17点
木製パネル、アクリル絵の具、ジェッソ
ぼく
「自分を含めて家族の肖像画を描く」という宿題が出たから、美術の先生(美人)の気を引くためにがんばって描いた。がんばりすぎたのか、先生は引いていた。ファッションにはあんまり興味ないかな。そもそも裸で何が悪い。
ねえさん
最近、彼氏と婚約したばかり。でも、その彼氏と付き合い始めてからどうも顔色がさえない。
にいさん
中学生のころからラグビーをしていたけれど、去年マネージャーの女の子に振られたショックでラグビー部をやめた。それから、すっかり筋肉が脂肪になってしまった。
とうさん
じいちゃんの後を継いで社長になったのは良かったけど、ここ数年間赤字続きで社員からの信頼がない。少しでも威厳を保つために、最近は口ヒゲをはやしはじめた。
かあさん
とうさんと結婚する前までは少しは名の知れた小説家だったらしいけど、今は引退して専業主婦。お気に入りのネックレスはねえさんからのプレゼントで、いつも身につけている。たとえ服に合っていなかったとしても。
とうさんのとうさん
つまり、じいちゃん
実家の肉屋を継ぐのが嫌で家出し、途方に暮れていたところを助けてくれたソーセージ屋で働くようになり、店のひとり娘だったばあちゃんと結婚した。そのソーセージ屋が大きくなって、お金持ちになった。会社の現会長。
とうさんのかあさん
つまり、ばあちゃん
「わたしは若いとき看板娘だったのよ」というのが口ぐせ。今でも充分に美しいつもりで、よくノースリーブの服を着ているけど、二の腕のたぷたぷは隠せない。
かあさんのとうさん
つまり、じいちゃん
若いときには新聞記者だったというじいちゃんは、その経験を生かして町内会の会報を作っている。でも3日に一度という発行のペースが正直言ってうっとおしい。かあさんが言うには、ぼくとじいちゃんはそっくりらしいけど…本当にそうかな?
かあさんのかあさん
つまり、ばあちゃん
ばあちゃんは優しくて、料理がうまくて、よくおこづかいをくれるからぼくは大好きだ。それに、若いころは美人だったようで、かなりモテていたらしい。若い時に両親と死別しているため、かなり苦労をしたようだ。似た境遇のじいちゃんと出会い、お互い励ましあううちに愛が芽生えたのよ、とばあちゃんは言う。とうさんのかあさんであるばあちゃんとは、妙に折り合いが悪い。
とうさんのじいちゃん
そして、じいちゃんのとうさん
つまり、ひいじいちゃん
がんこな肉屋のおやじさんだった。家出したじいちゃんとはケンカしたままだったけど、亡くなる前の年に仲直りしたらしい。そして、ふたりでよく飲みに行っていたんだとか。
とうさんのばあちゃん
そして、じいちゃんのかあさん
つまり、ひいばあちゃん
じいちゃんとひいじいちゃんの仲直りに一役買ったらしい。ひいじいちゃんが亡くなった後は肉屋をたたんで南の島に移住、現地の友達に囲まれて余生を過ごした。亡くなってずいぶんたつ今でも、ひいばあちゃんの友達という人から時々手紙が届く。
とうさんのじいちゃん
そして、ばあちゃんのとうさん
つまり、ひいじいちゃん
ばあちゃんが子供の頃はずっとソーセージ作りの修行のために外国へ行っていた。そのためか、帰国してからは相当ばあちゃんを可愛がっていたらしい。じいちゃんとばあちゃんの結婚を一番喜んでいたのはひいじいちゃんだったとか。とうさんが生まれてすぐ、ソーセージ屋が火事に巻き込まれたときに亡くなってしまった。
とうさんのばあちゃん
そして、ばあちゃんのかあさん
つまり、ひいばあちゃん
ひいじいちゃんはばあちゃんを甘やかしたそうだけど、ひいばあちゃんは厳しかったのだそうだ。その影響なのか、ばあちゃんはとうさんにも、ぼくたち孫にも厳しく接する。ひいばあちゃんは、夫を火事で亡くしてからすっかり落ち込み、半年後に病気で他界してしまったらしい。
かあさんのじいちゃん
そして、じいちゃんのとうさん
つまり、ひいじいちゃん
じいちゃんは、ひいじいちゃんに一度も会ったことがないらしい。なんでも、じいちゃんが生まれる前に愛人と駆け落ちしてしまったのだそうだ。どんな人だったのか、ひいばあちゃんに質問すると不機嫌になるのであまり聞くことができなかったが、とにかく女性にモテる人だったことは教えてくれた。
かあさんのばあちゃん
そして、じいちゃんのかあさん
つまり、ひいばあちゃん
何歳なのかは教えてくれないけど、かなり高齢で、かなり元気。女手一つでじいちゃんを育てた。じいちゃんもばあちゃんも、ひいばあちゃんの事をとても大切にしている。肉類、特にソーセージが大好物で、いつもとうさんの会社に注文をして家まで届けてもらっていた。その事が縁で、とうさんとかあさんは出会った。
かあさんのじいちゃん
そして、ばあちゃんのとうさん
つまり、ひいじいちゃん
ばあちゃんが幼いときに事故で亡くなったため、ばあちゃんはあまり覚えていないのだそうだ。でも、買ってもらった人形のかたちのオルゴールのことは忘れられないという。おもちゃ屋でわがままを言い、大泣きして欲しがったという思い出があるかららしい。
かあさんのばあちゃん
そして、ばあちゃんのかあさん
つまり、ひいばあちゃん
ひいばあちゃんは、ばあちゃんを生んですぐに亡くなってしまったらしい。そのため、ばあちゃんは叔母、つまりひいばあちゃんの妹に育てられた。生前のひいばあちゃんを知る人にばあちゃんが聞いたところ、物静かで病弱で、とても優しい女性だったようだ。
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